2013年4月29日月曜日

#69 Luvdump



もう4月も終ろうとしているが、今月中にこのバンドのことだけは書いておきたかったので急ぎ足で書きます。

Luvdump はイギリスの5人組バンドで、カンフーの達人っぽい髪がトレードマークの Chris がボーカルを務めている。2007年にバンドを結成し、2008年と2010年にそれぞれEPをリリースしている。基本的にはファスト・メロディックパンクとスカコアのミックスサウンドを激しく打ち鳴らしているが、初期の作品ではバラードちっくなサウンドも聴かれ、侘しい感じの曲を演奏できるのも彼らの持ち味でしょう。しかし、戦争や宗教、マネーといったことに対する反社会性のメッセージが強いのも彼らの持ち味で、それをストレートに、そしてパワフルに歌い上げる Chris が実にかっこいいのです。クラック・ロック・ステディ・バンドの中で最も硬派男気のあるバンドだと思っとります。

今月中旬、Luvdump はデビューアルバムをリリースしました。The Infested や Star Fucking Hipsters らとのライブ経験もある彼らは元々ファンも多く、このアルバムを待ち焦がれた人は多いはず。アルバムは Riot Ska RecordsPumpkin Records の全面サポートのもとリリースされたが、全曲フリーダウンロードできるようになってる。さすがに気前が良すぎるような気がします(笑)。これぞCRSスタイル。しかし応援のためにも、ぜひCDを買って男気サウンドを体感すべきです。

国:
イギリス

メンバー:
Chris - ボーカル
Dave - ギター
Jack - ギター
Will - ベース
Nige - ドラム

活動期間:
2007年~

作品:
2008 - Dumpin On Society EP
2010 - Information is Power EP(フリーダウンロード可能)
2013 - Age Of Austerity

デビューアルバムの購入、試聴先:
Riot Ska Records Bandcamp
Pumpkin Records Bandcamp


リンク:
myspace
bandcamp


2013年4月20日土曜日

V/Aもの その⑤


私の大好きな1枚を紹介します。フランスの Beng Beng Cocktail + アメリカの Atrocity Solution + イギリスの My Own Religion(From The Cradle To The Rave)+ α(ゲスト)という、今を彩るクラック・ロック・ステディ・バンドらによる2011年リリースのスプリット・アルバム「Track The Virus」です。それはもう内容が豪華で、このアルバムでしか聴けない曲も多数あり、アンダーグラウンド・スカ/パンク・シーンの宝とも言えるような作品だと思います。すでに持ってる人も多いかと思うが、この素晴らしき作品をもっと広めるべく、私が最高星を付けてのレビューを書きたいと思います。

Beng Beng Cocktail

このアルバムはまず、Beng Beng Cocktail が火蓋を切る。1曲目の「As We So, So We Reap」はエレキギターの音から始まるのでエレキの曲かな?と一瞬思ってしまう。しかしBBCはアコースティック・スカをスタイルとしたクリスタルコア・バンドなわけで、すぐさまアコースティックのエンジンが全開。リスナーの闘争心を掻き立てるかのようにスカのリズムが躍り跳ね、激しく、ダークに、そしてあっという間に1曲目は終る。正直、この1曲だけでも満足感が得られる。だがBBCは止まらない。2曲目、3曲目もBBC節が続き、クリスタルコアのテクニックを魅せてくれる。クリスタルコアの真髄、ここにありといった珠玉の3曲だ。


Atrocity Solution

4~6曲目は Atrocity Solution が魅せる。彼らもまたアングラ・シーンに生きるバンドでありながら、ハイセンスな楽曲を聴かせてくれるバンドの1つだ。サウンドを聴けば Choking Victim のフォロワーバンドであることは確実だが、ドラマチックな展開のあるメロディアスサウンドは彼らにしか作れないでしょう。最初の「Dark Days」はそれをよく表している。続く「Stay True」はスカのナンバー。なんと Public Serpents の Skwert(元 Choking Victim のドラマー)がゲストで登場。ASの所属レーベル Tent City Records は Skwert が取り仕切るレーベルなので彼を本作品に登場させることができたわけだ。これは拍手もの。そして6曲目の「Demon In Disguise」は最高にクラストコアなナンバー。O.F.C. が参戦。びゃーびゃー叫んでおり、最高にやかましい1曲です(笑)。


My Own Religion

7~9曲目は、デス・スカバンドの異名をとる My Own Religion による3曲。いずれも過去のEP作品から持ってきた曲だが、彼らが存在したという証を残すための3曲とも言える。なぜなら、このバンドは今や存在しないのだから。常にライオットサウンドを追求してきた彼らは、このアルバムの収録を最後に From The Cradle To The Rave(C-Rave)へと完全移行。つまり、このアルバムは MOR の遺作を込めた作品とも言える。なのであまり新鮮さは感じられないかもしれないが、我々はここでMORというCRSバンドがいたという事実を改めて認識しておくべきなのである。「God And The State」は、まさにデス・スカと言えるようなライオットなナンバーではないか。

(※ 画像はMORのEPのジャケット)


以上3バンドによるスプリットだが、このアルバムはここからが凄い。各バンドがもう1曲ずつボーナストラックを入れています。

ボーナストラック

ボーナス1曲目は Beng Beng Cocktail。正確に言えば Beng Beng Goes Electric 。今回は100%エレキのナンバー。彼らの2009年のアルバム「From The Swallow To The Bottle」の最後に収録されている「DIY」をエレキ化したもの。速くて激しくてダークで、エレキでもやっぱり彼らはセンス抜群だ。

続いてボーナス2曲目は、C-Rave の「Collapse The Gap」。ここに来てハイテンションになる曲をぶち込んでいます。ドカドカ迫り来る低音の電子音は、てめぇの体にムチを叩き込んでいるかのよう。MOR から完全移行したC-Raveによる、究極のライオットチューンがここにある。これは一体なんというジャンルか。そう、これがライットステップというジャンルなのだ。

さてアルバムも終盤に差し掛かり、ボーナス3曲目は Atrocity Solution が歌う。今度は彼らがアコースティックで歌ってくれます。「Watch The World Burn」などという、この世の終わりでも語っているかのような、なんともダークで悲しげな曲だ。

そして、最後の曲へ・・・。この曲を聴かずしてこのアルバムを語れまい。BBC、AS、C-Rave による競演ソングです。再び Skwert と、The Stupid Stupid Henchmen の Chet や Ghetto Blaster の Crowley までもが参戦!総勢6バンドのメンバーらによる夢の競演、これは豪華すぎます。C-Raveのピコピコ電子音+BBCのアコースティックをバックに、各バンドが交互に歌う、叫ぶ、怒鳴る!最高な1曲です・・・!!


以上、Track The Virus」のレビューでした。数ヶ国のバンドを巻き込んでの超大作、これを聴くと、クラック・ロック・ステディに国境など無いっていうことがわかりますね。長くなりましたが、結論を言うと、この作品が最高すぎるってことです。持っていない人は、今すぐ入手することをオススメいたします。


購入先(お好きな所からどうぞ):
Beng Beng Cocktail bandcamp
Atrocity Solution Store
Riot Gear Store
Beer Store
Pumpkin Records Store
amazon.co.jp
iTunes

2013年4月14日日曜日

#68 Broken Culture


引き続き、カナダのバンドを紹介したいと思います。Broken Culture はカナダ・モントリオール出身で、2008年頃から今も活動している4人組クラック・ロック・ステディ・バンド。しかしこのバンド、色んな意味で強烈です。

ちょっと確認しておくが、クラック・ロック・ステディの特徴の1つは、ボーカルの独特の歪んだスクリームでしょう(要は Stza っぽい歌い方)。歴代のCRSバンドの中では No-Cash の Chris(特に初期の頃)がズバ抜けたスクリームを発していたが、今回紹介するこのバンドのボーカル Tom もなかなかドギツい歌い方をしており、恐怖すら感じられます。

それが聴けるファーストEP The World Can Wait はなかなかの衝撃作だと思っとります(例によって Unknown Records よりダウンロード可能)。しかし喉への負担が大きすぎたのか評判が良くなかったのか、次の作品 There Will Be Blood では大人しい歌い方に変えてしまっている。それがちょっと残念なところ。代わりにジャケット画像が超グロいことになっていますが(笑)。Ghetto Blaster や From The Cradle To The Rave とのフィーチャリング曲が収録されているので、まぁ良しと言ったところ!

国:
カナダ

メンバー:
Tom - ボーカル
Fox - ギター、バックボーカル
Jeff - ベース、バックボーカル
Ian - ドラム

活動期間:
2008年~

作品:
2008 - The World Can Wait EP(フリーダウンロード可能)
2010 - There Will Be Blood(フリーダウンロード可能)
2011 - GB​/​CS​/​BC 3 Way Promo Split(Ghetto Blaster、Crack Squad とのスプリット、フリーダウンロード可能)

リンク:
myspace


↓ は Leftöver Crack のカバー曲です(アルバム未収録)。


2013年4月7日日曜日

1年が経過


おかげさまでこのブログを立ち上げてから1年が経ち、これまでに70組ほどのクラック・ロック・ステディ・バンドを紹介することができた。

改めて、クラック・ロック・ステディというのはスカの陽気さとパンクの怒りとメタルのどす暗さが入り混じり、時にはフォークやヒップホップさえも巻き込み、さらにはアナーコ精神や悪魔崇拝などという何でもありな姿勢を貫く危険で暴走的なジャンルだが、これほど強烈な音楽は他に無く、素晴らしいジャンルだと私は思っている。これまでにこのブログを読んでいただいた方にはこの素晴らしさを少しは伝えることができたのではないかと思う。

しかし、まだまだクラック・ロック・ステディの知名度は低いと思う。むしろ全然知られていない。やはりアンダーグラウンドという特性が強いがゆえに、表にはあまり出てこないからでしょう。ましてや店頭にCDが並んでるってことはまず無いし、日本では情報が発信されなさすぎだ。

でも、彼らバンドが発するメッセージを聴くと気づくはずです。今まで平和ボケしながらのうのうと生きてきた己の愚かさに。しかし同時に、拳を上げて何かに立ち向かってゆけという強いメッセージも与えてくれるはずです。何かが崩壊しつつある今の世の中こそ、必要としている音楽のような気がしてなりません。

もっと多くの人に知ってもらえるよう、これからも表世界では決して紹介されないこのクラック・ロック・ステディの素晴らしさを伝えていきます。

- CRSマニア -