私の大好きな1枚を紹介します。フランスの Beng Beng Cocktail + アメリカの Atrocity Solution + イギリスの My Own Religion(From The Cradle To The Rave)+ α(ゲスト)という、今を彩るクラック・ロック・ステディ・バンドらによる2011年リリースのスプリット・アルバム「Track The Virus」です。それはもう内容が豪華で、このアルバムでしか聴けない曲も多数あり、アンダーグラウンド・スカ/パンク・シーンの宝とも言えるような作品だと思います。すでに持ってる人も多いかと思うが、この素晴らしき作品をもっと広めるべく、私が最高星を付けてのレビューを書きたいと思います。
Beng Beng Cocktail
このアルバムはまず、Beng Beng Cocktail が火蓋を切る。1曲目の「As We So, So We Reap」はエレキギターの音から始まるのでエレキの曲かな?と一瞬思ってしまう。しかしBBCはアコースティック・スカをスタイルとしたクリスタルコア・バンドなわけで、すぐさまアコースティックのエンジンが全開。リスナーの闘争心を掻き立てるかのようにスカのリズムが躍り跳ね、激しく、ダークに、そしてあっという間に1曲目は終る。正直、この1曲だけでも満足感が得られる。だがBBCは止まらない。2曲目、3曲目もBBC節が続き、クリスタルコアのテクニックを魅せてくれる。クリスタルコアの真髄、ここにありといった珠玉の3曲だ。
Atrocity Solution
4~6曲目は Atrocity Solution が魅せる。彼らもまたアングラ・シーンに生きるバンドでありながら、ハイセンスな楽曲を聴かせてくれるバンドの1つだ。サウンドを聴けば Choking Victim のフォロワーバンドであることは確実だが、ドラマチックな展開のあるメロディアスサウンドは彼らにしか作れないでしょう。最初の「Dark Days」はそれをよく表している。続く「Stay True」はスカのナンバー。なんと Public Serpents の Skwert(元 Choking Victim のドラマー)がゲストで登場。ASの所属レーベル Tent City Records は Skwert が取り仕切るレーベルなので彼を本作品に登場させることができたわけだ。これは拍手もの。そして6曲目の「Demon In Disguise」は最高にクラストコアなナンバー。O.F.C. が参戦。びゃーびゃー叫んでおり、最高にやかましい1曲です(笑)。
My Own Religion
7~9曲目は、デス・スカバンドの異名をとる My Own Religion による3曲。いずれも過去のEP作品から持ってきた曲だが、彼らが存在したという証を残すための3曲とも言える。なぜなら、このバンドは今や存在しないのだから。常にライオットサウンドを追求してきた彼らは、このアルバムの収録を最後に From The Cradle To The Rave(C-Rave)へと完全移行。つまり、このアルバムは MOR の遺作を込めた作品とも言える。なのであまり新鮮さは感じられないかもしれないが、我々はここでMORというCRSバンドがいたという事実を改めて認識しておくべきなのである。「God And The State」は、まさにデス・スカと言えるようなライオットなナンバーではないか。
以上3バンドによるスプリットだが、このアルバムはここからが凄い。各バンドがもう1曲ずつボーナストラックを入れています。
ボーナストラック
ボーナス1曲目は Beng Beng Cocktail。正確に言えば Beng Beng Goes Electric 。今回は100%エレキのナンバー。彼らの2009年のアルバム「From The Swallow To The Bottle」の最後に収録されている「DIY」をエレキ化したもの。速くて激しくてダークで、エレキでもやっぱり彼らはセンス抜群だ。
続いてボーナス2曲目は、C-Rave の「Collapse The Gap」。ここに来てハイテンションになる曲をぶち込んでいます。ドカドカ迫り来る低音の電子音は、てめぇの体にムチを叩き込んでいるかのよう。MOR から完全移行したC-Raveによる、究極のライオットチューンがここにある。これは一体なんというジャンルか。そう、これがライットステップというジャンルなのだ。
さてアルバムも終盤に差し掛かり、ボーナス3曲目は Atrocity Solution が歌う。今度は彼らがアコースティックで歌ってくれます。「Watch The World Burn」などという、この世の終わりでも語っているかのような、なんともダークで悲しげな曲だ。
そして、最後の曲へ・・・。この曲を聴かずしてこのアルバムを語れまい。BBC、AS、C-Rave による競演ソングです。再び Skwert と、The Stupid Stupid Henchmen の Chet や Ghetto Blaster の Crowley までもが参戦!総勢6バンドのメンバーらによる夢の競演、これは豪華すぎます。C-Raveのピコピコ電子音+BBCのアコースティックをバックに、各バンドが交互に歌う、叫ぶ、怒鳴る!最高な1曲です・・・!!
以上、「Track The Virus」のレビューでした。数ヶ国のバンドを巻き込んでの超大作、これを聴くと、クラック・ロック・ステディに国境など無いっていうことがわかりますね。長くなりましたが、結論を言うと、この作品が最高すぎるってことです。持っていない人は、今すぐ入手することをオススメいたします。
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